昆虫を増やそう
ところが最近は市街地や近郊の昆虫相が全体として貧弱になっていて,特に中〜大型の昆虫が減っているように思う.もっと子供たちが昆虫に夢中になれるような仕掛けが必要である.
というわけで,とーとつですが,身近なところに中〜大型の昆虫がたくさんいるという状態を回復させることを提案したい.
お前はそういう事を批判してきたではないか,宗旨変えをしたのか,などと言われそうである.確かに,多少の政治的配慮,現実路線という方向性ではある.それは最近の「都市公園条例」が,高知市内の自然を破壊しつくしかねない状況だからである.自然保護の「理論」を研ぎ澄ますよりむしろ,賛同の得られやすい具体的な提案をすることが,今は必要である.
しかし「宗旨変え」ではありません.「庭づくり」に限りなく近い今の「都市公園」の考え方の中に,最小限の変更を持ち込もうという提案である.
昆虫を増やそう,というとすぐ飼育繁殖を考える人が多い.飼育下で殖やしておいて,それを野外に放つ.この手法は,たとえばホタルを復活させたい人たちがよく採用している.カブトムシの人工増殖もよく行われている.高知県では特別天然記念物のミカドアゲハを飼育繁殖させていた人がいて,そこで生産された大量の成チョウを野外に放つ行事が,小学生を動員して実施されたりしていた.
希少である>数が少ない>数を増やそう というような連想から,こういう手法を採用してしまうのだろうか.この手法は基本的にお勧めできない.いくら大量の昆虫を放しても,その昆虫が生活し繁殖できる条件がなければ個体数を維持できない,などの理由からである.
もう少しマシな方法として,その昆虫の幼虫が生息できる状態を作ろうという試みもある.上記のミカドアゲハの例では建設省(当時)が,この蝶の食草であるオガタマノキを植樹した.植樹というよりは植林,と言ったら言い過ぎだろうか.とにかく,かなり大規模に実施された.そして植樹地の近隣では今もミカドアゲハをごく普通に見かける.もっとも,ミカドアゲハは昔は少なかったかというと,そういう訳でもない.建設省の存在理由をアピールできたとは思うが,自然保護という点からいうと不必要な植樹であった.植樹のために既存の自然を破壊したのだから,ちょっと「やり過ぎ」ではないか,という感想を私はもった.しかし基本的には,飼育で増やした蝶を野外に放すよりは有効である.
これも昔の話である.高知県の大正町というところでは,「オオクワガタの森」を造ろうという試みがあった.オオクワガタを飼育繁殖させて,森にはクヌギを植えて...,というような計画だったと記憶している.幸いなことに,これはあまり成功しなかったらしい.
なぜ「幸い」かというと,そもそもオオクワガタは四国には生息しない.少なくとも極めて稀な昆虫である.そういう異次元生物が大正町のリッチな自然の中で大繁殖するようなことになったら,元来のものとは異質な「自然」が出現することになる.そうならなかったのは幸いと言うべきだろう.
昆虫採集の普及のため昆虫をふやそう,などと言うと,もう1つ連想してしまうのは魚釣りである.釣りの楽しさを増加させるため,魚を放流するということが,昔はよく実行されていた.四国の山中で,いる筈のないイワナが釣れたり,もちろんダム湖のフナやブラックバスなども,楽しみのために放流されたものである.それを職業的に大規模にやっているのがアユの放流で,これはカネがからむだけに始末が悪い.
とにかく,悪い実例はたくさんある.今思い付く限り,良い実例は皆無である.私の提案が,最初の「良い」実例であることを願っている.
もう少し書いておこう.
都市公園の昆虫を増やしましょう.
いま,高知城のような「都市公園」では,管理という名のもとに自然がどんどん破壊されている.このまま進んだら,市街地の自然は本当に貧弱になってしまう.そこで,管理の方法を少し改善してもらって,昆虫が増えるような「仕掛け」を潜入させる.たとえば倒木や朽木や落葉は,あえて撤去掃除しないで一部を現場に放置する.たとえば犬の糞は,特定区域外なら放置して構わないことにする.そして,こういう作業を,特に中〜大型の昆虫を念頭に置いて実施する.
たとえば,昔よく見られたのに最近は少ない中〜大型の昆虫をリストする.そして,それらが野外で増殖できるような仕掛けを,少しずつ作って行く.たとえばクワガタムシを増やすには朽木や倒木が必要である.クワガタムシやカブトムシの集まる「森の食堂」,つまり樹液を出す木も必要である.重要なことは,あまり大規模に実行しないこと.森はクワガタムシだけのためにある訳ではない.
たとえばシロスジカミキリを増やすにはどういう仕掛けを考えようか? たとえばコフキコガネは? というふうに,リストの昆虫ごとに,小さな仕掛けを設置する.そのようにして,森全体に中〜大型昆虫が増えるようにする.つまり,昔そこにあったのに今はほとんど失われてしまった状態を,小規模に局所的に再現する.
昆虫がたくさん見られる公園は,自然教育園としても効果を発揮するだろう.管理されすぎた旧来型の公園ではなく,自然が息づく,人と自然が「共生」?する,未来型の都市公園を提案したい.
都市公園を薄っぺらな庭園に作り変える作業が怒濤のごとく進行している.公園に指定されたエリアでは,昆虫が1つまた1つと消えて行っている.人は自然を造れないが,自然を少しでも残す努力が,いま必要である.
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熊森協会の方も大型動物のこと言ってました。大型動物が生息できない環境は生物の多様性がくずれて生態系がおかしくなっているそうです。
里山保全・奥山保護とかが昆虫にもいいんでしょうか??
by ayu15 (2009-08-14 08:45)
哺乳類や鳥類の場合,大型動物とは肉食の,「生態系の頂点に立つ」動物のことをさす場合が多いと思うので,昆虫の場合とは少しニュアンスが違うかもしれません.しかし自然が失われていくと大型のものから順に消えていく,という法則は成り立つかもしれませんね.
里山保全との関係は,個別に検討する必要があります.たとえばコガネムシ類には植物の根を食害するものがあります.最近コガネムシ類が減っているのは,根につく害虫に対する対策を農家がきっちり実行するようになったからでしょう.昆虫の多くは農家には敵なので,里山の昆虫を増やせ!などと言うと,農家からお叱りを受けるかもしれませんね.
しかし「都市公園の昆虫を増やせ!」という主張なら,もっと幅広く受け入れられるのでは,と私は期待しているのですが...
by Ladybird (2009-08-14 10:40)
ゴ・・リは嫌いだが、タガメは・・・・ という人も、けっこういます。
「虫のいい」ことで。
by ×第二迷信 (2009-08-14 23:12)
昆虫や小動物の好き嫌いはさまざまですが,昆虫愛好家の場合は,たとえばムカデなど,実際に危険な生物が苦手という場合が多いようです.私の場合,ゴキブリは苦手でないにしろ,好きとはとても言えません.
by Ladybird (2009-08-15 02:31)
お久しぶりです。私は昆虫に詳しくないのですが、子どもに付き合って虫探しに出かけることがあります。昔と比べると身近な生きものがどんどん減っていっているのは感覚としてわかります。きちんと管理されている(されすぎている)都市公園ならば、その手を少しゆるめて、というか昆虫が住みやすい環境をあえて作って増やしていく・・・というのは現実的な提案でしょうね。
ゴマダラカミキリ、ハンミョウ、オンブバッタ、キリギリス、ウマオイなどはわが家にもやってきてくれますが、確かに中型から大型の昆虫を見る機会は少ないです。
by mai (2009-09-05 01:48)
こんにちは.コメントありがとうございます.
>確かに中型から大型の昆虫を見る機会は少ない
そうなんです.子ども対象の「昆虫採集会」に行ってみても,子供の虫カゴに入っているのは小さな昆虫ばかり.昔のように中〜大型の昆虫が身近にたくさんいるという状態でなくなっています.もっと「大物」がいないと,やっぱり面白くないと思うんですね.
by Ladybird (2009-09-05 08:15)