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「最先端」の農業(つづき)

 農家からは嫌われることが多いけれど,豊かな自然こそは,じつは農業に必要なバックグラウンドである.「アレロパシー」という言葉を知っているだろうか.植物はさまざまな物質を空気中とか水中,土中に出している.そういう物質が他の生物の生育を促進したり阻害する.だから豊かな自然がある所では土や水や大気に,さまざまな化学物質が充満している.文字通り「空気」が,都会と違っている.
 アレロパシーは生物間の化学的な相互作用であるが,それに留まらず,生物はさまざまな形で互いに影響し合っている.相互作用を通じ,多様性がさらなる多様性を生じる.「自然」とは,そういうものだ.そして自然が生きている環境の中でこそ,農作物も家畜もすくすくと育つ.

 少し脱線します.
 かつてアイルランドはそういう土地であっただろう.植物だけでなく動物も,豊かな自然の中ですくすくと育った.羊毛の生産が盛んになりすぎたので,宗主国の英国は国内産業を保護するため,アイルランドでの毛織物の生産を禁止した.だから今でも毛織物は英国のものであり,アイルランドには毛糸のセーターしか残っていない.酒もまた同様で,アイルランド製の上質なビールを恐れて英国はアイルランドでのビール生産を禁止した.仕方なくアイルランド人は「ギネス」を造った.アイリッシュウルフハウンド,アイリッシュドラフトホース.なぜかアイリッシュと名のつく家畜には巨大なものが多い.

 もちろん動植物の品種は遺伝的なものであり,それは環境の「自然の豊かさ」と直接の関係はない.ただ,そういう変異体が存続でき,新しい品種として選別される背景には,やはり豊かな自然環境があるのだろう.私が居住する高知県にも,似たような例がある.新高(にいたか)という巨大な梨(なし)がある.改良ブンタンという巨大な柑橘類がある.長尾鶏と呼ばれる尾が異常に長いニワトリもいる.だから田舎の一次産業は面白い.

 さて.
 NHKが賞賛する「最先端」の農業では,あの広大な農地で1種類の植物だけを純粋栽培するために,どれほどの農薬を必要とするだろうか? モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」の使用は,もちろん除草剤耐性のある同社の遺伝子組み換え作物と一緒に導入されねばならない.通常の作物では雑草とともにラウンドアップで「除草」されてしまうからである.

 この人たちはどのような「土づくり」をするだろうか? 土壌生物の多くは姿を消すだろう.目指すべきものは土壌のない,水耕栽培のようなシステムかもしれない.それならば話は簡単.化学肥料をどんどん注入すれば良い.「自然」は邪魔者でしかない.
 こういう「農業」を田舎でやって欲しくないと思う.自然を敵視する農業とは結局のところ,大規模な自然破壊を意味する.狭い日本でそれを実施したら,日本から「自然」が消えてしまう.この美しい国を,そのような仕方で破壊しないで欲しい.

 私は何の話をしていただろう.
 食べ物の話だった.化学肥料と化物除草剤で育てた遺伝子組み換え作物を食べる話である. 日本国民の口にそういうジャンクフードを詰め込もうというのが大規模集約農業であり,つまりTPPなのだ.そういう方向に向けて,いまNHKは熱心に執拗に世論誘導を重ねている.
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コメント 8

Ladybird

 shira様,nice!をありがとうございます.
by Ladybird (2011-12-03 04:02) 

ayu15

先端農業も部分的ならどうかしりませんが、あまりうれしくないです。うちの言う意味の「里山」で自然の中?自然をあまりいじらない多様性を壊さない農業であってほしいです。
化学肥料と化物除草剤で育てた遺伝子組み換え作物を食べるてうれしくないです。
さらに大手チェーンのマニュアル化された規格品料理となるとなんか怖いです。

それで人が育つなんて・・。
by ayu15 (2011-12-08 13:18) 

Ladybird

ayu様,nice!とコメントありがとうございます.

>自然をあまりいじらない多様性を壊さない農業であってほしい

 全く同感です.

> 化学肥料と化物除草剤で育てた遺伝子組み換え作物

 米国は確実にそちらの方向に行っていますね.日本の政府もうれしそうに米国を真似しようとしているように見えます.
by Ladybird (2011-12-09 02:04) 

Ladybird

 ayu様,トラバありがとうございます.
by Ladybird (2011-12-14 17:51) 

meisinn

結局、石油エネルギーを消費して、有機物を「減らす」生産をしてるんですよねー。

さらに、原子力エネルギーも投入して、「野菜工場」とか。
(夜間電力が余ってるのを、光合成に使うなら、揚水ダムに水を汲むよりまだ効率がいいのかもしれないけど、
 メガソーラーの電力でLED電球を使って光合成・・を「エコ」だという人々は、ニュートンを勉強してないに違いない)
by meisinn (2011-12-24 23:44) 

Ladybird

meisinnさん,おひさしぶり.コメントありがとうございます.
 ご指摘の通りです.モンサント社のめざす農業は,どう考えても「持続可能」ではありません.

> 夜間電力が余ってるのを、光合成に使う

 開花結実するような作物なら,明-暗の24時間リズムもコントロールしないといけないので,夜間照明にするのなら,その部屋は昼は日光が入らないようにする必要があるでしょうね.

by Ladybird (2011-12-25 06:04) 

meisinn

TVで見る「野菜工場」はビルの中でやってますから、
昼夜逆転してるんでしょう。

壁面まで「有効に」利用するから、
サニーレタスが「棚」に並んで、LEDライトが照射されてました。

日照時間も温度も水分も養分も「性格に管理」されてるから、需要に合わせた供給が可能だ。外界から遮断されてるから虫も病気もつかず、農薬の必要がない、
というのが「売り」になってます。
(都心の空きビルの有効活用?)
by meisinn (2012-01-18 21:09) 

Ladybird

 バクテリアの純粋培養と同じで,植物も純粋栽培すればさぞ効率が良いだろうと思います.持続可能であれば,そういう形での食料生産も許容せねばならないでしょうね.
 ただ,純粋系は汚染に弱いので,汚染(たとえば雑草や病気の侵入)に対処するために,さまざまな薬品を投入する可能性があります.そのように育てられた植物を食べることについては,やはり警戒が必要のように思います.
by Ladybird (2012-01-19 09:55) 

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